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2008年1月22日 (火)

ジョン・クラカワー著「空へ エヴェレストの悲劇はなぜ起きたか(INTO THIN AIR )」感想

空へ―エヴェレストの悲劇はなぜ起きたか
空へ―エヴェレストの悲劇はなぜ起きたか

近年登山技術向上や、装備の進歩等もあり、以前よりはチャレンジしやすくなったエヴェレスト登山。そこに顧客をガイドして登る、いわゆる商業登山隊というものが現われていました。

その実態を調査する為に登山雑誌からルポライターとして派遣された山岳ジャーナリスト、ジョン・クラカワー氏が見たものは、エヴェレスト史上最大の遭難者を出した悲劇的結末でした。

日本人女性登山家で、セブンサミッターとなった難波康子さんもこの遠征で亡くなっています、しかも最後の最高峰登頂成功直後に遭難すると言った皮肉な結末を迎えてしまいました。

いまやヒマラヤ登山は限られた超人的クライマーの挑戦の場でも、国の威信を賭けた大遠征隊を擁さなくても良い時代になってしまったようです、なんとガイドが顧客を募集して比較的容易に安全に昇れる時代なんだそうで、お金さえ出せば、(と言っても莫大な資金が必要なんですが)経験の浅い登山家でも挑戦できるようになっていました。

ただ、そんな状態の為、商業的登山隊が7隊、国の団体が5つ、更にはドキュメンタリー撮影隊と、多くの組織が限られた時期に集中してしまう事態が起きていたそうです。

冬とモンスーンの間の天候の安定した時期は、4月から5月にかけてのほぼ数日、多くても数週間しか存在しないのです。もっとも理想的といわれているのは5/1~の数日間。

どこの遠征隊でも登頂を成功させたいので、当然そこへ目指して計画を立ててきます、しかし、そんな大人数で登れるほど道は広くなくロープが張られたルートはわずかです。

その為、各遠征隊のリーダーの話し合いでアタックの日程を調整したり、他のパーティーの進みぐあいを偵察したりと様々な駆け引きが行われていきます。

その中で取り決めを無視して天候の良い日に勝手にアタックを始める所が出てきたり、今迄あまり登山経験の無いパーティーによる停滞=渋滞が、他の隊の足を引っ張ると言った惨状を引き起こします。その為に登頂は遅れ、酸素は欠乏し、天候の変化に対応できなくなり、結果12人と言う最悪の遭難事故を引き起こしてしまいました。

商業登山の実情をレポートするはずだったクラカワー氏は皮肉にも史上最大の遭難事故を目撃して、その詳細をリポートする事になってしまったのです。

商業登山隊のガイドも、全開失敗した顧客を何とか登らせようと無理をして、体力の消耗したメンバーと共に山に留まる決断を下さざるを得なくなってしまうのです。

クラカワー氏はベテランであり、早めに登頂した幸運もありましたが、途中で動けなくなった仲間を見て、取り残さなけらばならない立場に立たされます、動けないメンバーはたとえ生きていても助けようとした方が遭難するので助けようが無いのです。

人が一人歩くだけでも死と直面してしまうデスゾーンで2人分の歩みは確実に死を意味するからです。

たとえ以前より容易になったとは言えそこはヒマラヤだと言う事を思い知らされた事でしょう。

誰でも機会が有れば立ちたいと思う世界の頂点はまだまだ非情な世界だったと言うわけです。

次回はその見捨てられた一人の人間の奇跡を描いた作品の話です

評価★★★★★

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