「ベルリン・フィル 最高のハーモニーを求めて(TRIP TO ASIA:THE QUEST FOR HARMONY)」映画感想
「ベルリン・フィル 最高のハーモニーを求めて(TRIP TO ASIA:THE QUEST FOR HARMONY)」
トマス・グルベ監督によるベルリン・フィル、アジア6カ所ツアーに密着したドキュメンタリー。
ベルリン・フィルの演奏は勿論、リハーサル風景や音楽監督サー・サイモン・ラトル氏や楽団員のインタビューを通して組織としての楽団ではなく、楽団のメンバーの素顔にも迫ります。
公式サイト:http://www.cetera.co.jp/BPO/
ストーリー「名門オーケストラ、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の2005年のコンサー ト・ツアーに同行したカメラクルーは、移動の飛行機からリハーサル、メンバーのホテルの部屋、自由時間、楽屋までを縦横無尽に動き回り、偉大なるオーケス トラの内側に潜入する。彼らの奏でる最高の音楽と素顔をとらえ、ベルリン・フィルの全容を映しだす。」
テーマ、としては以前上映されたオーケストラの向こう側 フィラデルフィア管弦楽団の秘密と同じような物ですが、フィラデルフィアでは楽団員のみに絞って、指揮者は全く表に出てきませんでした。
ベルリン・フィルはむしろラトル氏も前面に出て話をしてくれます。
ただ、原題にあるとおり、アジアツアーの模様も多く取り入れられ、北京、ソウル、上海、香港、台北、東京と全ての場所の現地の風物、人の暮らしまで盛り込んでいます、同じアジアと言ってもそれぞれ違う雰囲気を持つ都市ですので紹介したいと言う意図はわかりますが、そこに多くの時間を取られてやや冗長に感じてしまいました。
インタビューはラトル氏、ベテランの団員、入団テストを通ったばかりの試用期間の団員など、それぞれの思いを語っていくのですが、ベテランは楽団の伝統を守りながらいかに前進していくのか、世界最高峰の楽団という誇りと重圧に付いて語っています。
進入団員はテスト受験時の緊張や、その後の指導の厳しさに付いて語ります、彼らは演奏旅行に同行しながらも正式に団員として残れるのか、という課題も背負っています。
印象的だったのはベルリン・フィルは団員の発言力が大きく、指揮者と意見が合わなかったりすれば辞めさせる権限すら持っています、更に団員を採用するかどうかも投票で決められるそうです。
リハーサルの様子は実に興味深く、特にトーマス・アデスの「アサイラ」という初挑戦の曲目は難解で、指揮者の解釈を団員が汲み取るまでに苦労が見られました、そこでは団員の意見がきっかけで理解が進んだり、ラトル氏が自分のミスを認めて謝罪したりと、双方の音楽に対する真摯な姿勢が感じられました。
楽曲はそのアサイラを含め3曲だけで進みます、R・シュトラウスの「英雄の生涯」とベートーヴェンの交響曲3番「英雄」です。
その演奏は珠玉の輝きを放っていて、筆舌に尽くしがたい美しさでした。
また世界一の楽団の演奏家でも自分の演奏に付いて自信と喜び、不安と重圧の狭間で苦しみ、自己主張の欲求と楽団としての調和に悩む姿は、一人の人間として共感できるものでした。
フィラデルフィアで感じた音楽を追求しながらも人生を楽しんでいる姿とは対照的に、最高の楽団のメンバーという誇りと音楽に生涯を捧げるといった、覚悟の重さを感じました。
ただドキュメント映画としては、演奏旅行、団員の苦悩と喜び、伝統を守るプレッシャーと責任、とテーマが多くなりすぎたせいか焦点が定まっていない印象を受けました。
団員の話も、ツアーを最後に引退を決意した人、採用が決まるかどうか試練に立たされている人、自分の可能性を追求したいと悩む人、どこか絞り切れていない、深く掘り下げきれていないというもどかしさを感じでしまいました。
映画作品としては「フィラデルフィア」の方が純粋に楽しめましたし、帝国オーケストラやベルリン・フィルと子どもたちのような感動は伝わってきませんでした。全体的に判断すると散漫な感じ、エピソードの繋げ方がイマイチだったと思います。
出演者と演奏のクオリティーは★★★★★
映画としての評価は★★★+
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